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2021年9月22日

空芯コイル製作のための、リアクタンス測定

フィルタの製作を考えており、コンデンサはそれなりの容量値のものが手元にあるのですが、コイルのストックはあまり無く、通販でも満足に入手できません。
そこで昔ながらの『手巻きコイル』を作ろうと思うのですが、インダクタンス値を測れる測定器がありません。手持ちの機器を使ってリアクタンスを測る方法を考えてみました。

R-L(R-C)直列回路に交流信号(Rs)を接続し、各部の波形(振幅、位相)を2chオシロスコープで観測することでリアクタンス値を求める方法です。
180nH.jpg
回路に流れる電流は一定である。また抵抗値は既知であるとする。
Vr振幅とVx振幅は抵抗値、リアクタンス値に比例するため、Vr振幅とVx振幅を測定することによってリアクタンス値を求めることができます。
ただし通常のプローブはシングルエンド測定用なので、抵抗の両端をプロービングすることに戸惑いがありました。

共通のグランドで測定できるVsとVxからリアクタンス値を求める方法にしました(VsとVxからVrを求めることもできますが...)。
観測した交流信号(ここでは10MHz)のVsとVxの間には位相差が生じます。リアクタンスが誘導性の場合、Vxは位相進みとなります。
どれだけ位相が進むかでリアクタンス値を計算することができます。
欲しいインダクタンス値は180nHです。180nHの10MHzでのリアクタンス値:Xlは11.3Ωになります。
 Xl = 2πfL= 2x3.14x10x10^6x180x10^(-9) = 11.3 (Ω)
抵抗に11Ωを使用すると、VsとVxの位相角はほぼ45°となります。45°付近が素子値の変化に対する位相の変化が大きく、素子値を追い込みやすいためです。
要求する位相角:θは、
  θ = tan-1(R/X) = tan-1(11/11.3) = 44.2 (°)
となります。
ここでtan-1は、アークタンジェントの事です。
位相進み時間:Δtは、10MHzの一周期時間:100nsが360°に相当するので、
  Δt = 100(ns) x 44.2/360 = 12.3 (ns)
となり、VxがVsに対して12.3ns進んだ波形が観測できれば、リアクタンス値が11.3Ωとなり、180nHのインダクタンスが得られたことになります。
測定の様子です。
2021_09_19_IMG_9161.JPG
180nH_phase2.jpg
空芯コイルの粗密を調整し、希望のインダクタンス値を得られます。

-コンデンサの場合-
リアクタンスが容量性の場合、Vxの位相は遅れます。
同じ条件で、リアクタンスに1200pFのコンデンサとしたときの様子です。
1200pF.jpg
この時の遅れ位相:θは、
  θ = tan-1(R/X) = tan-1(11/-13.3) = -39.6 (°)
となります。
位相遅れ時間:Δtは、
  Δt = 100(ns) x -39.6/360 = -11.0 (ns)
となります。

1200pFのセラミックコンデンサをリアクタンスとして接続し、観測した時の様子です。
1200pF_Phase.jpg
-11.0nsに対して観測値は-11.5nsとなっています。
セラミックコンデンサの1000pF以上では±10%の誤差がありますので良い値です。

抵抗、リアクタンスは純粋なものとし、端子間容量、直並列抵抗等の要素は無視しています。
数十MHz程度で使用する分には十分かと思います。